私はキリギリス。夏の間食っちゃ寝喰っちゃ寝で遊び呆けていたのだが
いよいよ寒い冬がやって来た
誰かが置いていった服の中に納まり、
この冬はぬくぬく乗り切ろうと思っていた矢先、背後で何者かの気配がする
キリギリスさんキリギリスさん、一晩泊めてはくれないか
寒くて凍えそうなんだ
私の背後にいたのは一匹の蟻だった。
蟻さん蟻さん、どうしたのですか。夏の間たくさん働いて食物を
貯め込んで冬に備えていたのではないですか?
ああ、そのつもりだったんだが。そして夏の間遊び呆けていたあんたを
「ざまあ見ろ、このボケナスでぶちんがぁっ!」とあざ笑うつもりだったんだが。
そ、そんな非道いことを面と向かって、いや背後から言われてもなー
で、どうしたんです。体の調子でも悪いんですか
うむ、察しの通りだ。皮下脂肪という奴は必要な時に付けようと思っても
遅いんだ。その手前で付けておかなければならならんのだった。
有り余る食物を食べても寒さだけはしのげん。
デブはデブなりに寒い冬の間は有利なんだな。
だから下げたくもない頭をこうして下げに来てやったのだ。
な、なんだかすっげぇムカツクんすけどー
お願いしますお願いします、凍え死んだら化けて出てやがります
凍え死んだらふすまの隙間からいつも覗いてやがります
急にですます調になったけど余計にムカツク
しょうがないなーちょっとだけですよ
おお、すまんすまん、どっこいしょっと
ちょっと近付いてもいいかな
お好きにどうそ
あーぬくいぬくい、やっぱ分厚い皮下脂肪はあったまるわー
いつか首を絞めてやる・・・