朔太郎の去就その2

朔太郎と豆兄弟の初対面はいきなりやってきた。
豆兄弟が、開いたドアから廊下の様子を伺っていたところ、寝室へ行こうとした朔太郎を見つけてしまったのだ。
朔太郎はうすうすあの部屋にナニカがいる、とは思ってはいたものの、さすがにびっくりして足を止めた。
こんな時、猫は普通、相手の目を見ないものだと言う。
目を合わせる=メンチ切ってる=やんのかゴルァ!
ということになるかららしい。
しかし、朔太郎は生まれてこのかた18年、病院に行くとき意外は外に出ることもなく、
病院でもあまりの凶暴っぷりに、他の患者さんの迷惑になるからという理由で
時間外の診察になることも多いため、他の猫など見たことがないのである。
ところが豆兄弟の方も得意のまんまる目でじっと朔太郎を見つめている。
すわ、一触即発か!?
と思ったところで、何を思ったかだいずがスタタタターと朔太郎に駆け寄った。
まるで「おじいちゃーん!」とでも言った感じでなんの屈託もなく、鼻先まで近づいたのである。
驚いたのは朔太郎で「な、なんだ、この毛むくじゃらは!とりあえずキシャー」
というなんとも中途半端な威嚇をした。
ところがだいずはきょとんとしたまんまる目のままで、何をされたかまったくわかっていないらしく、逃げる様子もない。
朔太郎の方が驚いてくるりと踵を返して戻ってきたのだ。
かくして初対面は無事(?)に終わったのであるが、朔太郎が面白くなかったのは言うまでもない。
次の日もふてくされてしまっていたので、何とかなだめようと膝に乗せて兄弟の境遇を話して聞かせたら、
私には普段絶対に聞かせることのない低い唸り声を上げて抗議した。
さすがに18年も生きると人間の言葉もわかるんだ~などと感心しつつ、
もしかしたら豆たちも、いつも兄弟二人だけの環境だったのではないだろうか?
と今までの生活について思いを巡らせた。
お互い根気よく、少しずつ慣らして行こうと思った。